ずっと気になっていた本、西加奈子さんの『くもをさがす』をようやく読みました。
この本は、西加奈子さんがカナダで乳がんと診断されたときの出来事や、治療の過程をエッセイとして綴った作品です。
もともと彼女の作品が好きで、関西弁でテンポよく書かれているので、温かみとユーモアがあって、スッと心に入ってくる感じがします。乳がんと向き合う時間の中で
告知されたときの気持ちや、そこから考えたことがとてもリアルに描かれていて、
読んでいて胸がぎゅっとなる場面もありました。
そして、周りの人との関わりの中で嬉しかったこと、逆に気になったことも具体的に書かれていて、
「自分だったらどう受け止めるだろう?」と何度も考えさせられました。特に心に残ったのは、治療が終わった“あと”
安心して、ホッとするはずの“治療が終わった”その時。
でも西さんは、そこから湧き上がる罪悪感や不安についても正直に綴っています。
元気になったことを素直に喜べない気持ち。
周りに心配をかけたことへの申し訳なさ。
「この先どうなるんだろう」という新たな不安。
「私の全て」は、私が決めたこと
文中に出てくる
「私の『全て』は、結局、私が決定したものである。」
という一文が、特に心に残りました。
この言葉にふれたとき、
自分の“今”という時間を、もっといろんな角度から眺めてみたくなりました。
良いことも、そうでないことも含めて
「自分が選んできた人生なんだな」と、
改めて立ち止まって考えるきっかけをもらった気がします。『くもをさがす』は、乳がんの闘病記という枠におさまらない、
“生きること”や
“自分らしさ”
にそっと光を当ててくれるような本でした。
同じように病気と向き合っている人はもちろん、
日常の中でふと立ち止まりたくなるような瞬間がある人にも、
そっと寄り添ってくれる1冊です。