「言葉にできなかった気持ち」を、言葉にしてくれる人
2026/07/28東野圭吾さんの訃報を聞きました。7月23日、大腸がんで68歳。
数えたことはありませんが、たぶん20冊、30冊は読んでいます。
ガリレオシリーズ、加賀恭一郎シリーズ、マスカレードホテル、人魚の眠る家、秘密。
映像化された作品も多いので、「本は読んでいないけれどドラマは見た」という方も多いのではないでしょうか。
なかでも『容疑者Xの献身』は、本も読んで、映像も何度も見ています。
結末はわかっているのに、また見てしまう。
堤真一さんの、あの静かな献身に、毎回ぐっと持っていかれます。
東野作品に惹かれる理由は、トリックではありませんでした
ミステリーですから、もちろんトリックはすごいです。
科学の知識まで必要だと思います。どんな頭の中になっているんだろう?といつもビックリでした。
でも私が引き込まれるのは、そこではないんですよ。
東野さんの作品には、人の弱さや、少しドロッとした感情が出てきます。
妬み、悔しさ、虚しさ。
読みながら「私にも、こういうざらっとした気持ち、あるな」と突きつけられる。
誰にも言えずに抱えてきたモヤモヤが、「ああ、これだったのか」と言語化されていく感覚があります。
どれだけ人の心が読めるのだろう、と思うわけです。
これは実は、私たちの仕事ととても近いところがあると思っています。
経営相談を受けていても、相手が本当に困っていることは、最初の言葉には出てこないことが多いですよね。
「集客がうまくいかなくて」という言葉の下に、「本当は値上げが怖い」とか「あの人に嫌われたくない」とか、ご本人もまだ言葉にできていない感情が沈んでいる。
それを一緒に拾い上げて、言葉にして返す。相手が「そう、それが言いたかったんです」とおっしゃる瞬間が、伸びしろの見つかる瞬間だったりします。
小説家は、それを何百ページもかけてやっている人たちなのだと思います。
30代はビジネス書、40代からは小説
30代の頃は、ビジネス書ばかり読んでいました。話題の本、ベストセラー、とにかくノウハウを吸収して事業をブラッシュアップしなければ、と必死で。
あれはあれで、必要な時期でした。
でも40代くらいから、小説を読む時間のほうが増えました。
都会育ちで裕福な家に生まれた主人公の話を読むと、こういう人はこんなふうに世界を見るのか、とわかる。
逆に、親のいない環境で育った人、病気を抱えた人の物語を読むと、私が想像もしていなかったところに、しんどさのポイントがあることを知る。

自分とはまったく違う人生を、その人の内側から生きてみる。
喜びも、困りごとも、感情の動きも含めて。読み終わったとき、自分の中の引き出しがひとつ増えている気がするのです。
ビジネス書が「やり方」を教えてくれるとしたら、小説は「人の見え方」を増やしてくれる。
支援する相手が広がるほど、後者のほうが効いてくる実感があります。ド
ラマ好きなのも、たぶん同じ理由でしょう。そこに俳優さんの魅力が重なって、もっと立体的になるから楽しいのだと思います。
読んだ本、忘れませんか
正直に言います。私は、読んだそばから忘れています。
ですので記録をつけています。
最初は楽天日記に「今月読んだ本」として貼っていて、今はブクログというネット上の本棚に登録しています。
登録するときに、ひとことだけ感想を書いておく。「ここが気になった」くらいの、ほんの数行で十分です。
今回、『人魚の眠る家』はどんな話だったかしらと自分の感想を読み返したら、脳死をめぐる母親の思いに、当時の私がぐるぐる考えていた形跡が残っていました。
本の内容だけでなく、「その時の自分が何を感じていたか」が残っている。
女性経営者の方にこそおすすめしたいのは、感想を書かなくてもいいので、タイトルだけでも記録しておくこと。
1年分をまとめて眺めると、自分が何に関心を持っていた時期なのかが見えてきます。
事業の方向転換の前後で、読む本ははっきり変わるんですよ。
数字には出てこない、自分の変化の記録になります。
命は有限、という当たり前のこと
著名人の訃報を聞くと、当たり前のことなのに、人の命は有限なのだとあらためて感じます。
「いつかやろう」と思っていることが、私にもいくつかあります。
今日を大事にしよう、というありきたりな結論になってしまいますが、ありきたりだからこそ、ときどき思い出さなければいけないことなのだと思います。
東野圭吾さんのファンの方がいらっしゃったら、どの作品がお好きか、よかったら教えてください。
私は『秘密』も好きです。初期の作品ですよね。広末涼子さんで映像化されていたのを覚えています。
ブクログのアカウントも、参考までに置いておきますね。
心よりご冥福をお祈りいたします。たくさんの人生を読ませていただき、ありがとうございました。



