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「推し活」から学ぶ、時代を生きる人たちの心理とビジネスの本質

2026/04/28

2026年本屋大賞を受賞した朝井リョウさんの『イン・ザ・メガチャーチ』を読みました。

推し活をテーマに取り上げた小説ですが、「人の心理」と「それを動かす構造」は、マーケティングに共通するものがありました。

 

スキマ時間で深く学ぶ、オーディブルという選択

実は、私はここ数年、本を「読む」より「聞く」ことが多くなっています。

理由は シンプル、ゆっくり本を開く時間がなかなか取れないんですね。

 

でもオーディブルなら、通勤中、家事をしながら、入浴中など、スキマ時間を活用しながら、深い内容に触れることができる。

さらに、声優さんやナレーターの演技を通じて、物語がより立体的に、生々しく伝わってくる。

小説という作品が、単なる文字情報ではなく、本当に「生きた言葉」として耳に届くんです。

 

『イン・ザ・メガチャーチ』も、このオーディブルで聞きました。

そして、徹夜してでも続きが聞きたくなるほど、引き込まれました。

 

「推し活」を通じて見える、人間の本質

この作品のテーマは「推し活」の文化です。

アイドルグループが大好きで、彼らの応援に情熱とお金をつぎ込む人たち。

一見、シンプルに見えるこの現象も、朝井リョウさんは多角的に、そして生々しく描いています。

 

作品の中では、アイドルグループを売り出す「企業側の視点」と、応援する「ファン側の視点」の両方が描かれています。

特に印象的だったのが、企業のマーケティング戦略です。

 

9人のメンバーがいるグループの場合、誰を中心にストーリーを組み立てると、熱烈なファンが生まれるのか。

広く浅くファンを獲得するのと、深く、熱狂的なファンを作るのでは、戦略が全く異なってくる。

そこをどう設計するかが、実は計算し尽くされているということが、リアルに書かれていました。

 

これ、ビジネスにも通じます。

 

私たち女性起業家も、事業を成長させるために、どんなお客様に、どう価値を届けるのかを考えます。

広く浅いアプローチと、ターゲットを絞った深いアプローチ。

どちらが持続可能で、成長につながるのか。

朝井リョウさんの描写を通じて、その違いが明確に見えました。

 

なぜ人は「推し活」にハマるのか?その心理の裏側

人はなぜ推し活に、ここまでのエネルギーを注ぐのでしょうか。

 

作品の中から浮かび上がってくるのは、人間の根源的な欲求です。

自分の現実世界で満たされていないことがあったり、生きづらさを感じていたりする。

そうした時に、「推し活」という営みの中で、自分たちが「この人を、このアイドルを、スターにするんだ」という大義名分を得られる。

そこに自分の人生を重ね合わせて、自己実現を投影する。

 

ツアーに全部参加すること、CDを何枚買うこと、動画の再生数に貢献すること。

こうした一つ一つの行動が「達成感」となり、自分の人生に意味をもたらしていく。

その構造が、本当に巧妙に、そして周到に作られているのです。

 

人が何かに没頭し、そこに自分の人生を見出す。その営みは、人間にとって本来、大切なものです。

ただし、その構造を知ること、その仕組みを理解することは、私たち自身が事業をする時にも、そして人生を主体的に選択する時にも、本当に重要です。

 

陰謀論が広がる時代、情報との付き合い方

そして、作品のもう一つのサイドストーリー——陰謀論の話です。

 

あるアーティストの自殺をきっかけに、一部のファンが「このはずがない。本当は殺されたんだ。黒幕がいるんだ」という陰謀論へ傾斜していく。

そこには、陰謀論を仕掛ける側と、それにハマっていく人たちの心理が、かなり生々しく描かれています。

 

正解が見えない時代だからこそ、私たちは何か「よりどころ」を求めたくなります。

「何が真実なのか、わからない。だけど、ここに示された情報が真実だ。私たちは騙されていたんだ」——こうした物語に引き込まれていく心理が、すごく理解できてしまうんです。

 

経営をしていると、似たような場面に出くわすことがあります。

市場の動き、お客様の反応、ビジネスの先行き。

確実な情報が少ない中で、意思決定をしなくてはいけない。

その時に、簡単な説明や「これが正解だ」という言葉が、どれほど魅力的に見えるか。

 

だからこそ、私たちが必要とするのは「情報を吟味する力」です。

陰謀論を単に「信じるか信じないか」という二項対立で考えるのではなく、「どの情報が、誰から、何の目的で発信されているのか」を問い続ける力。

それは、ビジネスの世界でも、人間関係でも、本当に大切な力なのです。

 

弱さを知ることの大切さ

朝井リョウさんの描写で特に心に残ったのは、「人間の弱さ」に対する眼差しです。

陰謀論にハマる人、推し活に没頭する人、それぞれが何を拠り所にして生きているのか。

その多様性を受け入れながらも、「それを煽る人がいて、ハマる人がいる。そこで現実の生活が立ち行かなくなったり、友人や家族を失ったりすることもある」という現実を、ぼかさずに描いているんです。

 

起業をしていると、時に自分たちの事業が人の心に与える影響を感じます。

良い影響も、そして悪い影響の可能性も。

だからこそ、人間の弱さを知ること、その上で責任を持って事業を進めることの大切さが、この作品を通じて強く伝わってきました。

 

『イン・ザ・メガチャーチ』は、確かに「推し活」という現代的なテーマを扱った小説です。

でも、その根底には「人間とは何か」「どうして人は特定の物語に引き込まれるのか」「時代を生きるとはどういうことか」という、本当に根源的な問いが流れています。

 

朝井リョウさんの『イン・ザ・メガチャーチ』。
ぜひ、手に取ってみてください。